2010年8月19日木曜日

貴重な時間

こっちに 1 年間来た目的にはいくつかある。

一つは今やっている研究を進めること。それから,将来研究のネタになりそうなものを見つけることもある。執筆中の教科書を仕上げることなんていう仕事もあったりする。それともう一つ,今までキチンと勉強できなかったことを時間をかけてじっくりやってみる,ってこともできるかなぁ,と思っていた。

定期的に時間を作ってそういうことをやっている。具体的には通信などに利用する系列生成の分野で,ある程度半常識的に知っている,あるいは大枠で証明なんかも理解している,というものがたくさんある。僕の場合,もともと学生時代はこの分野の研究をしていなかったので,必要に応じて,論文を読んだり,本を調べたりしながら,自分の知識にパッチを当てつつ,ここまで来たっていうのが正直なところだ。じっくりと腰を据えて勉強する,なんてのは学生の特権みたいなもんだが,ここにくれば,学生みたいな身分というか,授業がない分,学生よりも時間があるくらいで,そういうこともある程度はできるというわけ。

ただ,闇雲に手をつけても仕方がないので,この先,ひょっとすると何かで使えるかもなぁ,と思われる辺りの勉強を,少し丁寧にやっている。丁寧に,というのは,一つ一つの定理や命題の証明を自分が納得できる方法で与えていくような感じ。こういう分野は教科書的な本はなく,ほぼ自明のように書かれている命題でも,キチンとした証明を与えようとすると,非常に手間がかかったりする。必要に応じて文献に当たって過去の発見に立ち返ることもあるので,時には 50 年近く前の文献を眺めることもある。

今日は,ある定理の証明を自分なりに与えてみたんだが,どうも無駄が多いような気がするので,もっとエレガントに行かんもんかと思って,ヒントを求めて文献を探した。IEEE (古いと IRE) の IT Trans. にあるようなものだと PDF で簡単に手に入るが,全部が電子ファイルになっていなかったり,大学がサイトライセンスを取っていないようなジャーナルだと,プリント版をコピーするしかない。今日,帰ってくる前に雑誌の存在だけは確認できたので,明日,図書館に行ってこれらを入手して続きを進めようと思います。

こういう作業って研究を前に進める上では,はるかに遠回りなんだが,本来解きたいと思っている問題の解決策がおぼろげに見えてくるような感覚もあるので,ミステリーを解くみたいで面白い。直感的に明らかだと思えるものの場合,単なる復習にしかならないこともあるんだが,時には,「厳密に示そうとすると,ここまで戻らなくちゃイカンのか」と思うようなこともある。細か~いことを,じっくり考えながらゆっくり進むので,少しもどかしい感じもするんだが,実は結構頭の中が整理されて,だんだん閃きにつながってきたりする。こんな時間,日本じゃ絶対取れないと思うから大事にしないと。

あぁ,そうそう,こっちに来た目的には,さらにもう一つあるんだが,それは…また今度ね。

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