今年の AFI アワードはこの作品のためにあると言っても過言ではなかった。その作品とは
Animal Kingdom
原題のまま表記したのは,この作品の日本公開が現時点で未定だから(悲しすぎる)。しかし,この作品,興行成績こそ,今年度の国内第 3 位に甘んじたものの,評判は極めて高かった。ストーリーは,母親を亡くした少年が祖母の家に引き取られるが,そこの家族がメルボルンの裏社会に暗躍する犯罪一家で…という話。実際の事件にインスパイアされたオリジナル作品ということだ。舞台がメルボルンで,撮影もほとんどがメルボルン市内で行なわれている。僕も市内の映画館で観たけれど,その力強い描写に息を呑んだ。
この作品,AFI アワードでは,長編劇映画としてノミネーションを受けられる全 16 部門のうち,15 部門で 18 のノミネーションを受けるという記録的快挙を成し遂げた。ノミネートされなかったのは,視覚効果賞だけ。これは作品の性格上いたしかたないだろう。部門数とノミネーションの数が合わないのは,主演男優賞で 4 人中 2 人,助演男優賞で 4 人中 3 人(!! 刑事役のガイ・ピアースを含む)がこの作品だから。つまり,主演・助演の 4 賞で 7 人の役者が受賞候補になっているということで,日本でもアメリカでも,ちょっとこんなの聞いたことがない。主要人物はほとんどノミネートされている感じ。
で,結果はというと…ノミネートされた 15 部門中,
- 作品賞
- 監督賞 (David Michôd)
- 主演男優賞 (Ben Mendelsohn)
- 主演女優賞 (Jacki Weaver)
- 助演男優賞 (Joel Edgerton)
- オリジナル脚本賞 (David Michôd)
- AFI メンバーズ・チョイス賞
- 編集賞 (Luke Doolan)
- 作曲賞 (Antony Partos, Sam Petty)
このうち,今回の受賞者の中でも特筆すべきは,主演女優賞を受賞した Jacki Weaver だろう。彼女は主人公の少年の祖母役で,この犯罪ファミリーの「ゴッドマザー」的存在。彼女の存在感がなければ,この作品の成功もなかったんじゃないかと思わせるほどの名演であったと思う。
実は,この作品はアメリカを含む海外数カ国でも公開されていて,先日発表されたアメリカのナショナル・ボード・オブ・レヴュー賞で,Jacki Weaver は助演女優賞を受賞している。アメリカでもかなり評価が高いようで,アカデミー賞の助演女優賞の有力候補との噂もある。
僕もこの映画は本当によくできた作品だと思うし,彼女の演技の迫力,存在感にも圧倒された上,何と言ってもメルボルンが舞台ということもあって,ぜひ本場のアカデミー賞でもひと暴れして欲しいなぁ,と思っている。
しかし…この映画,日本公開はないんですかね? オスカーを獲ったら遅れて公開ってこともあるかな? それとも DVD スルーだろうか… DVD にもならないなんてことはないよね??
オーストラリアでは DVD と BD が既に販売されていて,特にブルーレイはリージョンフリーみたいだから,日本で紹介されないという最悪の事態を考えて,買って帰ろうかなぁ,なんてちょっと思い始めているけど…どうなんだろう??
こんばんは。
返信削除お久しぶりです。
覚えていてくださったのかどうか、わかりませんが、コメントをいただき、どうもありがとうございました。
“Animal Kingdom”は、サンダンス映画祭の時から注目してたんですが、その後、全然評判を聞かないのでどうしたものかなあと思っていました。
これだけのキャストなんだから、日本で上映されたっていいとは思うんですが、昨年の『サムソンとデリラ』だって地方の映画祭のみでの上映で東京未紹介だし、“Balibo”も“Beautiful Kate”も日本未紹介のままです。
劇場公開された『小さな村の小さなダンサー』は、個人的にはけっこうガッカリししてしまったので、わざわざ日本で劇場公開するほどのものでないのなら、未紹介のままでもいいかと思ってしまったりするんですが、どうなんでしょう?
お久しぶりです。こちらこそ,ありがとうございます。豊富なデータにはいつも感服しています。
返信削除そうなんですよねぇ。こっちで特に限定公開とか,特別上映されただけの作品の中には,日本じゃやらないだろうなぁ,と思われる作品が少なくありません。
日本のスクリーン数は増えているのかもしれないけれど,シネコンだけに依存しているので決して健全な状況とは言えませんね。恵比寿ガーデンシネマも閉まってしまうようですし…