まず,昼の回は「フラワーズ」。正直言って,
何じゃ,これ?
って感じ。6 人の女優が 3 世代にわたる一家の女性たちを演じ,彼女たちが命をつないでいく姿を描いた作品。設定としては大河ドラマっぽいが,大河としてのうねりは皆無。では,6 人の女優の魅力を十分に映し出しているかというとこれも不十分。ストーリーなんてどうでもいいから,6 人を魅力的に映すことに専念した方がナンボかマシだったかもしれない。セリフも演技も平板。さらには,少子化の時代とは言え,産めよ育てよ的な話の流れが古臭い上に,押し付けがましい。ハッキリ言って,主演の 6 人がかわいそうである。蒼井優なんて,「おとうと」の時とはまるで別人のように輝きを失っていた。大河ドラマならミニシリーズ化してもいいくらいの題材だと思うが,1 時間 50 分でも長く感じた。こんなの 30 分で十分。
一方,夜は,気を取り直して,今回の映画祭で恐らく一番前評判の高い,中島哲也監督「告白」。
いやぁ,これは期待を裏切らない傑作だったね。娘を失くした女性教師が教室で驚くべき告白を始める。松たか子演じるこの教師の告白は冒頭 30 分近く続いて,一旦,終わる。その後,生徒や親の告白を伏線として張り巡らしながら,物語は結末へ向かって大きくうねり出す。そして,ラストも,この教師の驚くべき告白で,まさに驚くべき終焉を迎える。
原作は読んでない。原作の力もあるのかもしれないが,そこは中島監督,相当捻りを利かせているに違いない。そもそも,モノローグで紡がれる物語なんて,映画的にはあまり魅力的ではないはずなんだが,映像の力でぐいぐい引き込まれていった。各エピソード(各告白と言うべきか)のつなぎも絶妙。計算されつくした脚本と演出,それに応えた演技陣。特に松たか子は怖い。それに音楽もいい。これまでもさまざまな手で我々を驚かせてくれた中島監督だが,総合芸術としての映画の醍醐味を,しかもこんな恐ろしい物語で見せてくれた。拍手喝采。
しかし,この物語には,コミュニケーション,理解,信頼,想像力などの欠如,喪失が通奏低音として流れている。こりゃ,僕のような職業の人間には,リアルなホラーだよ。あー,怖い。
ここまで衝撃的で練り上げられた日本映画を久々に見たような気がするが…しかし,この後味…アカデミー外国語映画賞は…どうだろうね?
リメイクの噂もあるようだが…アメリカ人には…無理じゃないかねぇ?
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