2010年11月22日月曜日

facebook を作った男

月曜恒例の Cinema Nova。今日は話題の "The Social Network" を観てきた。

世界最大の SNS サービス "facebook" を作り上げた男マーク・ザッカーバーグ。彼のちょっとしたアイディアがどのように巨大なモンスターに成長していくのか,その過程を描いた作品。監督はデイヴィッド・フィンチャー。事実に基づいたフィクションだけれども,「事実」から映画化されるまでわずか 7 年というのは,記録的に短いんじゃないだろうか。オーストラリアでも facebook はポピュラーだし,映画自体の評判もいいので,興行成績も上々のようだし,劇場も学生を中心に賑わっていた。

facebook 成長の裏には訴訟に次ぐ訴訟が繰り広げられていたわけだが,映画もマークと同じハーバード大の学生であった人物たちとの間の訴訟を縦糸にして,さまざまなエピソードをパッチワークのようにつなげながら,facebook が成長し肥大化していく様を描いていく。

なるほど,デイヴィッド・フィンチャーが好きそうな題材ではある。「人と人とのつながり」を生むインフラとしてすっかり定着した SNS であるが,一見すると仮想的な「友達の輪」を作るツールのように見えなくもない。ところが,この映画で描かれているのは,その裏にある恋愛だったり,欲望だったり,ギリシャ神話にも似た裏切りの物語だったりと,やたら人間臭い「体温の通った」物語である。なるほど,評価がやたら高いのはこの辺にあるのかもしれない。創始者にすら予想もできない成長を遂げる仮想空間のモンスターを描いたのかと思いきや,実はヒューマンドラマ。外見は極めて現代的な題材を扱っていながら,作品を貫いているのはごく古典的なテーマなんだから。本物はどうか知らないけれど,機関銃のように人間離れした早口でしゃべりまくるマークと他の人物たちとの対比もなかなかおもしろかったりする(マークのセリフは早くてとてもとても全部は聴き取れない…)。

最初は,ハーバード大の学生コミュニティを通じて会員数を伸ばしていく facebook だが,それだけではいずれ限界が訪れる。そこでサチらずに,現在のように大きく成長した触媒の一つがナップスターの創始者であるショーン・パーカー。このショーン・パーカーを演じているのが,何とジャスティン・ティンバーレイク。僕は別に彼に何の思い入れもないし,彼の演技を観たこともなかったのだが,これがなかなかの好演。マークが彼と初めて会い,彼の話に吸い込まれるようにして惹かれていくシーンは,マークが初めて人間っぽい表情を見せて見どころの一つと言える。

個人的には物足りないなぁと思ったところもないことはない。たとえば,アイディアが創出される瞬間っていうのは,一見,「指パチン」みたいに突然訪れたように見えても,実はそれ以前にいろんな伏線があるはず。これは天才を描いた過去の数々の映画も同様に抱える問題なんだけれど,その「伏線」を限られた時間で描くのは難しいし,多くの場合退屈なんだろうな。仕方がないとは言え,ちょっと違うんじゃないかって気がしてしまう。

それともう一つはラスト。ショーンとの出会いのシーンに負けず劣らず,マークの究極の人間臭さが描かれているのがこのラストシーン。冒頭のシーンと対比してこの映画をうまくまとめるにはこの方法が唯一かつベストなのかもしれない。でも,ちょっと甘すぎるんじゃないかね。っていう気もする。

ということで,僕の難癖はどっちも「ないものねだり」の域を出ない。トータルとしては,現在も成長を続ける「ナマモノ」を正攻法で描き上げた力作と言っていいと思う。その意味でオスカー候補と言われるのも納得。

日本では 1 月公開とのこと。海外に比べると日本では facebook の広がりは今イチみたいだけど,映画の方はどうだろうね。

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