2010年8月31日火曜日

異邦人

先週,ステガノグラフィの授業をした話をしました。その授業内容に関する演習問題も作って,それを木曜日の授業で Udaya さんが学生たちにやらせることになっていたので,今日,会ったときに

演習問題どうなりました?

と聞いてみた。そしたら,今日か今週の木曜日に配ってやらせる予定だという。なんか最初の話と違うなぁ,と思ってよくよく聞いてみると,僕が作ったままの原稿だと,ネイティブの学生から見て不自然な表現が多いので,少し直してくれてたらしい。

ありがたいが,自分の英語力を少し思い知らされた orz

日本にいるみなさぁん,僕の英語力を信用しちゃいけませんよぉ。アイ・アム・ア・ペンですよぉ。

ううむ,まだ修行が足らんな…

2010年8月30日月曜日

Happy Birthday, Melbourne!

今日はメルボルンの 175 回目の誕生日でした。

誤解を避けるために正確に言うと, Enterprize 号という船でタスマニアを発った John Lancey 船長をはじめとするヨーロッパからの移民が,現在メルボルンと言われている地域に荷を下ろしたのが,1835 年の 8 月 30 日。それからちょうど 175 年ということです。175 がキリのいい数字かどうかは微妙だが,25 の整数倍というのはそう悪くないという気もする。

今日はこれを記念して,旗を揚げるセレモニーなど多くのイベントがありました(詳しくは公式サイトを参照のこと)。


"Melbourne Day" なる歌まで作られていて,小学生が歌う,なんてのもあった。ちなみに歌詞はこちらで見られます。地元ラジオのインタビューで子供たちがさわりだけ歌っている様子はこちらで聞くこともできます。

あと,バースデーケーキなるものも作られていて,市長によるケーキカットなんていうイベントまでありました。


港には,エンタープライズ号のレプリカも停泊していて,内部を見学することもできました。


今日は,ここしばらくの不安定な天気がウソのようにカラッと晴れていて,日中は半袖でも過ごせるような陽気でした。このまま春が来るのかなぁ。

2010年8月29日日曜日

春のワイン祭り

今日は,メルボルンから電車で 30 分ほどのところにある Sunbury という街のワインフェスティバルに行ってきました。市内のトラム,地下鉄,バスなどの共通チケットである Metcard の範囲内にあるので,僕が持っている週末一日券だと,一日 3 ドルでどこでも行き来できる! 往復 3 ドルの位置にワイナリーがあるなんて,素敵だ。

まずは Sunbury の駅から一番近いところにある Craiglee というワイナリーへ。ここで,共通のグラスを 5 ドルで購入。後は,テイスティングしたいワインをここに注いでもらうというシステム。グラスに半分とかフルとかだと有料になる。チーズやクラッカーなどの軽食もワイナリーの好意で出ている。

Craiglee の向かいには Goona Warra という別のワイナリーがある。ここは今回の祭りには不参加のワイナリーなので,試飲は有料になるが,どうせ有料ならということで,ここで昼食を取ることにした。オーダーしたワインは,シャルドネ。ここのシャルドネはナッツのような香りが強くて,ひと味変わっていました。これはアリだと思う。

この 2 つ以外のワイナリーは,かなり離れた位置にあるのだが,今日は特別に無料のシャトルバスがワイナリー間を巡っている。ということで,順に Wildwood,Yuroke,Pitruzzello,Longview Creek と周りました。全部で 6 ヶ所。さすがにハードだったな。

今日一番のお気に入りは,Wildwood で飲んだ Dundonal(写真)。これはカベルネとピノノワールのブレンドということだけど,しっかりとしたタンニンが感じられてボク好みでした。


あと,面白かったのは,Yuroke で試した Rose。普段,ロゼは甘い感じがしてあまり飲まないんだけど,ここのはドライで,しかも色も普通のロゼより濃いめ。ボトルも 17 ドルだったんで,1 本購入してしまった。

というわけで,今週もアルコール先生ぶりを発揮してしまいました…

どこも,あまり有名なワイナリーではないんだけど,それぞれ特徴的なものを作っていたし,市内から 3 ドルで到達。試飲だけならグラス代 5 ドルで済むってことで,最低限度のコストは 8 ドル。これはワイナリーツアーに参加するよりもかなりお得だぞ。ただ,年に 1 回のチャンスだけど。

この知る人ぞ知るイベントに気付いた自分を褒めてあげたいです。

2010年8月28日土曜日

日本の技術力

新聞に折り込まれていたエンターテインメントガイドに,上原ひろみのアルバム "Place To Be" のレヴューが出ていた。日本では昨年発売されて,僕も一時期こればっか聴いていたが,オーストラリアでは最近リリースされたらしい。

批評では,彼女の技術力を brilliant,exhilarating と讃える一方で,もっとエモーショナルな音楽を求める人には不向きというような記述も…。これだと何だか超絶技巧に走り過ぎていて,音楽としての楽しさが味わえないような誤解を生みかねないなぁ,と思って読んでいた。

記事の中にあったようにオープニングの "BQE" や "パッヘルベルのカノン" は確かに彼女の技術を十分に堪能できるし,"カノン" に至っては,トリッキーなサウンドも味わえる。でも,十分に感情豊かな曲もあるし,"BQE" の中にだって,技巧的なパートと感情豊かなパートの両方,かつその双方が味わえるパートも含まれているようにも思うんだけどな。

記事を読んだ後で,もう一度じっくりアルバムを聴いてみたが,やっぱ,これいいよ。僕は好きだな。まぁ,新聞のレヴューも,彼女の技術力を十分に認めた上で,さらに高いものを要求したようなところがあるからね。

世界に誇る日本の技術力は産業界だけの話じゃないのだ。

2010年8月27日金曜日

アートな一日

今日は,大学を休んで美術館巡りをしました。

まず,前から行かなくちゃと思っていたもの。ACMI で開催中のティム・バートン展。


入口付近にはバットモービルのレプリカもありました。


ティム・バートンは僕が好きな映画監督を 5 人上げたら確実のその中に入りますねぇ。しかし,ティーンエイジャーの頃から 40 年近くの間,作風が変わっていないというか,底に流れるものが終始一貫していることに改めて感動を覚えました。彼の作風はダークなテイストでありながら,そこはかとないユーモアが混じっているところがいいんだねぇ。やっぱりファンタジーの世界の住人なんだな。僕が「スウィーニー・トッド」とか「スリーピー・ホロウ」に今一つノレないのは,このユーモアの部分が少し足りないからなんじゃないかと,改めて確認した次第。展示品は映画で使用されたアートワークや衣装だけじゃなく,彼自身のスケッチや手描きのストーリーボード,学生時代に描いたものなど,およそ彼に関するものはほとんどすべてそろっているんじゃないかという充実ぶり。4 時間くらい入り浸りましたが,ホンットに見ごたえあったね。School trip で来てたと思しき 2~3 の高校生の団体は,サクサク僕を追い抜いて行ったけどね (^^;

もともとはニューヨークの MoMA でやったものを持ってきたみたいだけど,日本でもやらないかな,来年くらいに。そしたらまた行くけどなぁ。

チケットは,ティム・バートン展と NGV (National Gallery of Victoria) で開催中の European Masters のジョイント・チケット(2 割引になる)を購入。NGV は必ずしも今日入館する必要もなかったようですが,せっかくだから,今日そっちにも足を運びました。


ティム・バートンが超コンテンポラリー・アートであったのに対し,こっちはロマン派,印象派などの絵画展です。入ってから気づいたんだが,この展覧会,フランクフルトのシュテーデル美術館の収蔵品を持ってきたものなんですね。10 月にフランクフルト行くのに…。まぁ,でも,ドイツ行ったらいろいろ忙しくて美術館どころじゃないと思うんで,ま,いっかと自らを納得させて,こちらも堪能しました。印象派に重心が置かれている感じだったけど。物足りなかった分はフランクフルトで見れってか??

NGV では「茶と禅」の特別展(無料)も開催していて,今度の日曜で終わるらしいんで,ちょっと覗いてきました。茶道のことは詳しくないけど,英語の説明が充実しててなかなか良かったですねぇ。そうか,お茶は五感で楽しむものなんだな。ビールと同じじゃん。ビールも視覚,嗅覚,聴覚,味覚,触覚をフル活用するんですゾ。あ,それと,パブに行ったら,あまたあるタップの中から「これ」っていう一杯を嗅ぎ分ける「第 6 感」も必要かも。うんうん,麦酒道も十分に奥が深いのであった。

NGV は 17:00 で終了なので,その後もう一度 ACMI に戻って,入場無料のメディアテークへ。ここではデータベースにある映像を自由に閲覧できます。というわけで,ティム・バートン版のヘンゼルとグレーテル(実写)と,短編アニメシリーズ "Stain Boy" の 6 エピソードを観賞。Stain Boy は全部観てたと思うけど,後に行くほどバカ度が増してることに改めて気がついた。特に,エピソード 4 と 5は,見え見えの結末なんだけど,それが妙におかしくて,声出して笑っちゃったよ。一人のブースで…

いやぁ,充実した休日でした。代わりと言っては何だけど,明日は土曜日ですが少し仕事しようと思います。一応,自分なりにバランス取ってんだぞ。

2010年8月26日木曜日

観客賞

メルボルン国際映画祭の観客賞 (Audience Award)が発表になりました。ランキング形式で発表され,1 位にはニュージーランド映画の "Boys" が選ばれました。日本映画では,細田守監督のアニメーション「サマー・ウォーズ」が 5 位に入っていました。残念ながら,僕が見た作品は 10 位までには入ってなかったんだけど,個人的には今回の映画祭は十二分に満足だったので,まぁ,よしとしよう。

ドキュメンタリー映画は別にランキングが発表されていて,僕も大絶賛した "The Invention of Dr. Nakamats" が堂々の 2 位にランクインしました。確かに劇場内,爆笑の嵐だったもんなぁ。これでまた一つドクター中松の勲章が増えましたね。

ランキングについて詳しくは公式サイトをご覧くださいね。

話は変わって…急に思い立って,来週の週末,ダーウィンに行くことにしました。まぁ,実は急に思い立ったわけではなく,雨季に入る前,9 月か 10 月の前半にでも行ければいいだろうなぁ,とは考えていました。どうせなら,航空券が安く手に入ればな~くらいに考えていたんだけれど,往復で 25,000 円くらいに収まるチケットが押さえられそうだったので,日程に合うツアーを検討。大学の Union House にある旅行代理店で,ダーウィン発 2 泊 3 日でカカドゥ国立公園へ行くツアーに申し込みました。ツアーの宿泊はキャンプサイトらしいのでシュラフ持参です。ノーザン・テリトリーは,アリススプリングスとウルルしか行ったことなかったので(しかも 15 年以上前),楽しみです。

2010年8月25日水曜日

署名かつ押印

学校から書類が送られてきた。
  • 被扶養者申告書兼扶養親族届
  • 住居・通勤・単身赴任手当現況届
の 2 点。なぜわざわざ海外まで送られてきたかというと,この書類が 2 つとも,本人の自筆署名および押印が必要なんだそうだ。なんで? なんでそこまでしなくちゃいけないの?? 押印だけでいいじゃん。なんだよ,署名かつ押印って。そもそも,本当に本人が署名したかどうかなんて,どうやって確認すんだよ。そのうちにパスポートの認証コピーでも提出しろとか言い出すんじゃないのか???

まぁ,大した作業じゃないから,20 分もあれば書類はできたけれども,20 分で済むペーパーワークのために,往復 2 週間近い時間と,料金にして 3,000 円近いコストをかけなくちゃならんとは…

誤解のないように言っておくけど,僕に書類を送ってくれた人は全然悪くない。だってしょうがないもん。それが求められてんだから。だけど,書類フォーマットを作った人間,いや,ちがうな,2 つとも同じものが求められているということは,書類の書式を定める規則を作った人間が悪い。絶対。今,「俺のこと?」と思った君,君だ君!! 君が悪い!!!

反論があるなら,コメントでも直メールでもいいから,かかってきなさい。正々堂々と受けて立つよ。

んんん,それとも,僕の頭が悪いだけ??

でも,こんなんが公的書類のスタンダードになったんじゃたまらんなぁ。

こっちの学生にもボヤいちゃったよ。

そうかぁ,でも,長期で海外に出るときには,自分の署名を正確にマネできる人材を養成しておかなくちゃいかんわけだな。勉強になりました。

って,もうこんな機会ないかな??

2010年8月24日火曜日

初体験

今日,初めて外国の大学で授業を行なった。今日 1 回こっきり,60 分一本勝負でしたが。

国際会議なんかでしゃべっても 15 分か 20 分程度のもんだし,専門家を前にしたセミナーなんかとも違って,相手が学生なんで,それなりにやりにくいかなぁ,と思ってましたが,なんとかなりました。

一応,学生の注意をつかむために,ポイントポイントでネタを仕込んであったんだが,まぁ,それなりに笑いも取れたんで,良かったと思います(そこかよ)。

意外となんとかなるもんだなぁ。日本でも英語でやるか…

なんちって。

2010年8月22日日曜日

学位の価値

今朝の新聞にちょっと気になる記事が…


オーストラリアには,主に州が所有する TAFE (Technical and Further Education) という学校が 100 以上ある。中等教育以降を対象にした職業訓練のための専門学校で,設立理念や形式は日本の高専に似ている。事実,ウチの学校もヴィクトリア州の TAFE と国際交流をやってたりする。

記事の内容は,TAFE が建築,看護,IT,経理その他の分野で,大学と同等レベルの学士 (bachelor) の学位を与える計画をしていることに関するもの。これに対して大学側に反対意見があるという話。

反対派の根拠は
  1. 多くの学生が学士コースを履修することで,学士の価値が薄れる。
  2. 私立大学が多くの留学生を抱えて破綻した例があり,TAFE でも同じ現象が起こることが予想される。
  3. TAFE は低所得者層からも多くの学生を受け入れているが,学士を取得するために必要な資金は一般の大学よりも高額になる。
  4. 学士のための教育に力を注ぐことで,本来の職業訓練的な性格が薄れることが懸念される。
などなど。うーむ,どこかで聞いたような話だ。大学の学士レベルにどのくらいの価値を見出すかってことにもよるけれども,特に 1. に関しては,我が国の大学院教育に対して起こった議論に似ているなぁ。言葉は悪いが,アホを多く受け入れてどうするんだという…。その意味で,日本の学部教育ははるか昔に価値を失くしているかもしれない。2. と 3. はオーストラリア特有の問題かもしれない。2. は移民政策にも関連するし,3. は日本と少しシステムが違うので,ちょっとイメージしづらい。4. は日本の高専も同じような問題を抱えていると思われる。

記事の中には,TAFE で取得した学位が,大学の学位よりも低く見られがちだとかいう記述もあって,この辺は,さもありなんとは思うが,にわかには同意しかねる。一般に,日本の高専の専攻科で取得した学位が大学の学部教育で取得したものと比べて低く見られているかどうかは良く知らないが,教えているこちらからすると,そこらの学部教育よりははるかに高い内容を学生には求めているわけで,意識としては少なくとも大学の修士レベルと同等であることを目指している。ただ日本では,高専は学位を与える機関としては認められていなくて,学位授与機構というところに申請をしないと学生は学位が得られなかったりするわけで,やっぱりある種,特異な先入観や偏見に晒されているという気がしないでもない。

まぁ,TAFE の教育レベルと高専のレベルが同じであるとは限らないので,単純な比較はできないわけだけれど,最後は,学校としてのアウトプット(つまり学生,卒業生)のクオリティをどう保つかってことになるのだと思う。大学院の定員増の時の議論と似ているけれども,最後の砦は,最前線に立つ我々教員の良心にほかならない。これは TAFE だろうが高専だろうが,大学だろうが最終的には同じことだ。時代の趨勢によって,クオリティの維持が難しくなることはあるかもしれないけれども,少なくとも我々の姿勢としてはそこで妥協しちゃいけないわけだ,やっぱり。高専の専攻科も定員増が叫ばれているから,もはや隣の庭の話ではない。

というわけで,少なくともボクんとこに来る学生は,それなりに覚悟するように。甘くないよ。

2010年8月21日土曜日

Woodend

今日は,メルボルンから Bendigo 線という電車に乗って 1 時間の Woodend という街に出かけました。目的は,市内の酒屋でもよく見かける「牛」のマークでおなじみ Holgate という地ビール工場訪問です。訪問と言っても,工場見学ツアーは予約が取れなかったので,単にバーでビール呑んでくるだけなんだけどさ。電車で片道 1 時間,500 円くらいだから,まぁ,八王子から飯田橋に呑みに行くようなもんだろ。

Woodend の駅下車徒歩 2 分ほどで,Holgate Brewhouse 発見。すぐじゃん。日本でも地ビール工場は意外とへんぴなところにあるので,このアクセシビリティは貴重ですね。


タップで出してるビールを全種類味わえるという Tasting Paddle があるというので,それをオーダー。


今出てるのは8種類で,前列は右から Pilsner,Mt. Macedon Ale,The Mild One,Brick Kiln Road Wheat Beer の 4 種。後列は左から Nut Brown Ale,ESB (Extra Special Bitter),Hopinator,Temptress の 4 種です。

今日の僕のお気に入りは,Hopinator。ホップがハッキリと主張した double IPA です。ちょっと柑橘系のアロマもあって,これはうまい。あと,好きなスタイルでもある Wheat も良かった。色はクリスタルモルトとローストモルトを使ってるということで,他のウィートビールよりも濃いめですが,バナナやクローブの香りが楽しめる正統派のウィートでした。ちょい色モノだけど印象的だったのは Temptress。バニラとココアを使ったビールで,香りは深煎りしたエスプレッソという感じ。焦げ臭いというくらいの強烈なアロマを持っています。そこにバニラやココアのフレーバーが加わって複雑な味わい。それなのにフィニッシュは意外とスムーズでした。

残念だったのは Nut Brown Ale で,少しダイアセチル(オフフレーバーの一種)が出ているように感じられて今イチだった。The Mild One は度数の低いビールですが,香りも味も麦茶そっくりで,何だか懐かしくて笑ってしまった。Pilsner はハチミツのような香りもして,そこらのピルスナーより上等でしたね。Mt. Macedon Ale は日本にも好きな人が多そうなホッピーなアメリカンスタイルのペールエール。苦味はもちろん,まったりとした甘みも悪くない。ESB は,最初口にした感じはそれほど苦味を感じないんだけど,後味に強烈な苦味が残る。後からグイグイ来るタイプですね。

食事はダークエールを使ったビーフパイを食べたけど,これも美味しかったです。

さて,到着してほぼ 1 時間半ほどで目的を達してしまった。この辺には散歩コースもあるみたいだが,観光案内所によると,7 キロほどでハンギング・ロックに行けるという。ハンギング・ロック,ご存知でしょうか? 1900 年のバレンタインデーに Woodend の女学生が集団で失踪したという事件があり,ピーター・ウィアーが監督して "Picnic at Hanging Rock" という映画になったことでも知られています。

観光案内所のおばちゃん的には,多分,車で行くと思ってたんだろうが,車じゃないのだよ。7 キロと言えば,僕にとっては徒歩圏。ということで酔い覚ましに散歩 & 登山することに決定。見た通り,岩がそそり立っているような山…というか岩ですな。


Woodend の街を後にして 3 キロくらい歩いたところで,車が止まり,登山口まで送ってくれた。ラッキー。拾ってくれた女性は,この辺の住民で毎週土曜日の朝,ハンギングロックに登ってるんだそうですよ。もちろん失踪したことはないそうな。

というわけで,犬を連れて,毎週登れる程度の山。登ると言っても,20 分もすれば頂上なので,大したことはない。ただ,最後の辺りはかなり岩がごつごつしていて若干危険ではある。ニュージーランドのミルフォードトラック用に買ったトレッキングブーツが今日デビュー戦で活躍。いやぁ,それに少し歩いたんで酔いが覚めてて良かった。

(↑頂上ちょっと手前の風景)

(↓頂上から下の眺め)

帰りは誰も送ってくれないので((^^;)仕方なく,Woodend まで徒歩で帰りました。そういえば,ハンギングロックの売店のおばちゃんに「車で来たのか?」と聞かれたので,「『足』で来た」って答えたら驚かれました。車で来ると売店で駐車料金を払うらしい。おばちゃん,残念っ!!そもそも車で来ると呑めんのだよ…って,そんなことおばちゃんは知る由もないが…

途中景色のいいところで写真なんかを取りながら 1 時間と 20 分くらいで街に戻りました。この時点で,夕方の 5 時くらい。これからすぐの電車で帰ってもアパートの夕食には間に合いそうもないので,少し街をぶらぶら歩いて,夕食も Holgate で食べて帰りました。あと,ボトルのビールも売ってたので,ベルジャンスタイルのアビーエール Double Trouble なんかを購入。これはスタイルから言っても常温で楽しむのが良さそうだ。楽しみ。

いやぁ,天気も良かったし,充実した休日でした。

今度はブルワリーツアーを予約してまた来よう。

2010年8月20日金曜日

あれ?

昨日から始まったパンパシフィック水泳をかなり熱狂的に見ている。今日は北島のレースがあったので,大学は午後から出ることにして,昼間共通部屋 (SCR) でライブ中継を見ていた。

日本でもこれだけ熱狂的に競泳にかぶりつくのは少数派だろうとは思うが,オーストラリアは少し状況が違うんだろうと思ってた。ところが,こっちでも競泳,そうでもない。僕が中継見てると,部屋に入ってきた学生が「何見てんの? 競泳…ふーん…」みたいな…。本当にここはイアン・ソープを生んだ国か??

あれ,俺の見込み違いだったか???

まぁ,今回のパンパシは,ネットのテレビガイドを見たところでは,日本でもテレ朝が深夜にダイジェストをやる程度みたいだから,まぁ,こんなもんなんですかね?

ちなみに,オーストラリアでは,大手ネットワークの一つチャンネル Ten が運営するスポーツ専門局 One HD がライブ中継と再放送をしている。解説の女性は,日本の選手のことも結構詳しく知っている風だし,それなりにちゃんとした放送をしている(多分,名前を聞いたら,元選手で知ってる人かもしれない)。ただ,新聞のスポーツ欄なんかでは,競技の結果も掲載されているけど,オーストラリア選手の結果ですら,間違って掲載されていたりする。昨日の男子200バタなんて,日本の松田とオーストラリアのニック・ダーシーの順位が入れ替わってた…やっぱ,あんまり思い入れないのかなぁ?

おっかしいなぁ…

2010年8月19日木曜日

貴重な時間

こっちに 1 年間来た目的にはいくつかある。

一つは今やっている研究を進めること。それから,将来研究のネタになりそうなものを見つけることもある。執筆中の教科書を仕上げることなんていう仕事もあったりする。それともう一つ,今までキチンと勉強できなかったことを時間をかけてじっくりやってみる,ってこともできるかなぁ,と思っていた。

定期的に時間を作ってそういうことをやっている。具体的には通信などに利用する系列生成の分野で,ある程度半常識的に知っている,あるいは大枠で証明なんかも理解している,というものがたくさんある。僕の場合,もともと学生時代はこの分野の研究をしていなかったので,必要に応じて,論文を読んだり,本を調べたりしながら,自分の知識にパッチを当てつつ,ここまで来たっていうのが正直なところだ。じっくりと腰を据えて勉強する,なんてのは学生の特権みたいなもんだが,ここにくれば,学生みたいな身分というか,授業がない分,学生よりも時間があるくらいで,そういうこともある程度はできるというわけ。

ただ,闇雲に手をつけても仕方がないので,この先,ひょっとすると何かで使えるかもなぁ,と思われる辺りの勉強を,少し丁寧にやっている。丁寧に,というのは,一つ一つの定理や命題の証明を自分が納得できる方法で与えていくような感じ。こういう分野は教科書的な本はなく,ほぼ自明のように書かれている命題でも,キチンとした証明を与えようとすると,非常に手間がかかったりする。必要に応じて文献に当たって過去の発見に立ち返ることもあるので,時には 50 年近く前の文献を眺めることもある。

今日は,ある定理の証明を自分なりに与えてみたんだが,どうも無駄が多いような気がするので,もっとエレガントに行かんもんかと思って,ヒントを求めて文献を探した。IEEE (古いと IRE) の IT Trans. にあるようなものだと PDF で簡単に手に入るが,全部が電子ファイルになっていなかったり,大学がサイトライセンスを取っていないようなジャーナルだと,プリント版をコピーするしかない。今日,帰ってくる前に雑誌の存在だけは確認できたので,明日,図書館に行ってこれらを入手して続きを進めようと思います。

こういう作業って研究を前に進める上では,はるかに遠回りなんだが,本来解きたいと思っている問題の解決策がおぼろげに見えてくるような感覚もあるので,ミステリーを解くみたいで面白い。直感的に明らかだと思えるものの場合,単なる復習にしかならないこともあるんだが,時には,「厳密に示そうとすると,ここまで戻らなくちゃイカンのか」と思うようなこともある。細か~いことを,じっくり考えながらゆっくり進むので,少しもどかしい感じもするんだが,実は結構頭の中が整理されて,だんだん閃きにつながってきたりする。こんな時間,日本じゃ絶対取れないと思うから大事にしないと。

あぁ,そうそう,こっちに来た目的には,さらにもう一つあるんだが,それは…また今度ね。

2010年8月18日水曜日

やべえ話

来週火曜日に行なう授業のスライドが完成。学生向けの演習問題も作った。ウチのガッコでも専攻科の授業では英語で資料作っているので,じょさもないこっちゃ(←北海道弁)。暗号の授業の 1 回をゲストスピーカーとして僕が担当して,「ステガノグラフィ」の概要をレクチャーします。

こっちは半期の授業が試験を除けば 12 週だそうですよ。そのうちの 1 回を僕が使うんで,本来授業を担当する Udaya さんは 11 回で済むわけだ。うまいこと考えたな…

しかし,JABEE なんかで 15 週という数字が高専でも大学でも出てくるけど,あれって根拠は何なんでしょうね? 別に回数が多けりゃいいってもんでもないと思うが…

JABEE とは何の関連もないけど,メルボルン大は 2009 年の世界大学ランキングで 36 位。日本でこれより上位にいるのは東大と京大だけ。ただ,こんな順位だって,別に「教育の質の高さ」を保証するものでは何でもない。

何か一つの物差しで客観的な評価を下そうとすると,数値やら必要条件やらをチェックするしかないのかもしれないけれども,やっぱりある種,標準化の弊害って気がするよね。ミシュランガイドなんかと同じで,ナマものを扱っている以上,客観的評価って難しいような気がするけどな,正直言って。

2010年8月17日火曜日

四千年の怪

えー,日曜日,腕時計を買った話しましたね。

安物だったね。まぁ,言わずもがなだけどね。

(↑写真だと良さそうに見えるが,実際はもっとカッコ悪い)

時計としては機能するから,別に不満はない。ストップウォッチとしても使える。おぅっ! 上等じゃないかっ!!

ところがだ。なんかおかしい。ストップウォッチモードにして,右下の「START/STOP」ボタンを押しても,ピッて言うだけで何も起こらず。これ,「START/STOP」 だろ? 「ピ」ボタンじゃないだろ? 韓流アイドルじゃないだろ??

試しに,いろいろ押してみたら,ストップウォッチ動き出した…右上だ,スタート。右上と右下が逆だ orz

さすが Made in China。 四千年の歴史は侮れない。

それとも,アレかい? 本場中国では,SPLIT は START で RESET が STOP かい? STOP は RESETかい?? なんか禅問答みたいになってきたので,この辺で話題を変えよう。

お隣にニュージーランドから来ている Marie さんご夫妻が住んでいた。このセメスターからメルボルン大にソーシャルワーカーとして来ている。すごくさっぱりした性格の人で,いろいろ話をするのが楽しかったが,ノースメルボルンにアパートを見つけたとかで,明日引っ越すらしい。メールするからアドレス教えてくれってんで,名刺を渡しておいた。ナーバス・ブレークダウンしたら相談できるかな?

ってか,しそうもないけど。

こうやって,僕の隣人は次々変わっていきます。次は誰が来るかな? 待ってるよぉ。

2010年8月16日月曜日

ヒョウ

ビックリした。

ヒョウが降った。

ヒョウって言っても,こないだ捕まったピンクパンサー的なヒョウじゃないぞ。
(まぁ,正確にはあれも豹ではないわけだが。)

雹(こういう字なのか)ですよぉ。

こっちに来て,雨は降っても雪が降るような気候じゃないんで,歩いてて頭に固形物の感触があったんで驚いた。「あれ?」って見上げたら,夥しい量の雹が…

いやぁ,たまげた。異常気象ですなぁ。

2010年8月15日日曜日

Open Day

今日,僕の住む University College (UC) は Open Day で,入寮希望者など,多くの人が見学に訪れていました。まぁ,どこにでもある話ですが,ダイニングルームなんかも,各テーブルにフルーツバスケットが置かれたりして,いつもよりグレードアップ。住んでいるこちらもそのご利益にあずかりました。この機会にパンフレットやウェブに使う写真も撮るってことで,食事しているところを撮影されました。無精ひげ生やしてたから使われないかな?


大学のキャンパスも今日は公開していて,恐らく多くの来訪者がいたんじゃないかと思います(行ってないからわからん)。あいにくの雨でしたが,UC の方は結構盛況だったようではあります。

僕はと言えば,買い物などしに街へ。買ったものリスト。CD 2 枚(Birds of Tokyo, Court Yard Hounds),グリーティングカード,万年筆カートリッジ,ビール関係の本,スクラップブックと糊,それに一番大事なもの…腕時計。結局,動かなくなったソーラー時計は日本に帰ってから修理することとして,別なものを買うことにした。Target っていうスーパー的なところで,スポーツウォッチを 25 ドルでゲットしました。日本なら同じようなものをもう少し安く買えるかもしれないけど,まぁ,2000 円程度なら許容範囲かと。ジョギングの時なんかも使えそうだし,かえって重宝しそうです。ちなみに Made in China。

夕方は,ACMI でヌーヴェルヴァーグのドキュメンタリー "Two in the Wave" を観賞。ゴダールとトリュフォーについてのドキュメンタリーだったが,アントワーヌ・ドワネルで始まり,アントワーヌ・ドワネルで終わる構成。なるほどね。視点としては面白かった。

帰りに,キチッとパブにも寄り道。Otway Estate の India Black Ale というビールと,たまたま出ていたニュージーランドの Tuatara Hefe Weizen をいただく。IBA はユニーク。この手の重たいボディの黒ビールでここまでホッピーな香りが楽しめるものは珍しい。Tautara の Hefe はヴァイツェンとしてはうまいけど,濁ってない。ヘーフェじゃなくてクリスタルヴァイスだよ。でも,好きなスタイルだからこれはこれでいいけどね。写真は IBA を呑む前にたまたま隣にいたおっちゃんの好意で撮っていただきました。地元のおっちゃんと世間話しながら呑むのも楽しいのだ。

2010年8月14日土曜日

Footy 再履修

料理の鉄人が実にアレだったので,順番が前後してしまうが,今日,footy の試合を観てきた。前にも一度,Etihad スタジアムで観戦しているので,今回は 2 回目。ただ会場が MCG (Melbourne Cricket Ground) であるということと,今日を逃すとレギュラーシーズンはもう見られない可能性があること。ごひいきのカールトンがポストシーズン勝ち進むのは難しいと思うから,勝ちゲームを一度は見たいなぁ,ということなどから昨日,急きょ見に行くことに決定した。直前にチケットを取ったので,ちょい高めの指定席しか空いてなかったけど,致し方なし。全体の流れは見づらかったが,目の前でプレーが見られるので,迫力はありました。


カードはカールトン対リッチモンド。カールトンは現在 6 位,リッチモンドは 15 位。勝たなくちゃいかん試合です。結果は,156-67 でカールトンの圧勝。特に第 2 クォーターは 47-1 と一方的だった。残り 2 試合は上位チームとの対戦だが,第 2 クォーターみたいなプレーが続けば,可能性を感じる内容ではありました。でも,イージーミスが多いんだよね。今日も相手に助けられたところもある。

前にも書いたけど,日本のプロスポーツと違って,ホームとアウェイが明確に分かれていない。まぁ,どっちもメルボルンのチームだってこともあるんだけど。僕の前に座っていたオッサン 5 人組も,一人だけがリッチモンドサポで,あとはカールトンサポ。5人一緒に観戦している。このオッサン達のバカ話を聞きながら観戦するのも楽しかった。リッチモンドサポのオッサンがだんだんブルーになっていくんで,他の一人が "Here's something to cheer you up!" とか言って,懐からエロ本出す始末。あんた,何持ち込んでんだよ!? ってツッコミは入れなかったが,ビール吹きそうになった。

第 4 クォーター辺りになると,グラウンドにカモメが大量に来訪。食いカスなんかを投げ込む客がいるんで,餌求めてくるんですかね?モルトの甘い匂いもするからなぁ。


ちなみに,ここ MCG は,南アW杯のアジア予選,日本-オーストラリア戦が行なわれた会場だったし,古くはメルボルンオリンピックのメインスタジアムでもありました。ゲートの横にはメルボルン五輪金メダリスト一覧のパネルが。鉄棒の小野喬さんの名前も確認できます。


カールトンの次のゲームは来週の金曜夜,現在 2 位のジーロングと。テレビ観戦しようと思うけど,結果は厳しいだろうなぁ。

Alle Cuisine!!

いやぁ,twitter の方で実況してたんだけど,あまりにシュールだったんで,こっちにも書きます。

今日,テレビで『料理の鉄人』を見た。前からやってるのは知ってたけど,他の番組見てたり,土曜の夜は出かけていたりで,なかなか機会がなかった。SBS One っていう,UHF 局でやっているんだけど,ここのアパートのアンテナが良くないのか,毎回チャンネル設定を微調整しないとキレイに入らなかったりするもんで,別に無理して見なくてもいいしぃ,みたいな感じだったこともある。

今日はちょうどヒマだったし,そういえば,やってたよなぁ,くらいの動機でチャンネル微調整してみた。

いやぁ,観て良かったよ。ここまで珍妙なもんだとは思わなかった。

英語吹替え版なんだけど,美食アカデミー主宰の鹿賀丈史のところだけ,ご本人の声で英語字幕が入る。あとは鉄人,挑戦者,ゲスト,それに実況の福井さんも全部吹替え。何で鹿賀丈史だけ…英語版を作るにあたって,鹿賀サイドから「吹替えは許さん」とかいうクレームがついたか?

あと笑ったのは,スタジアムからのリポートがいちいち「Fukui-San!!」と叫ぶ(もちろん吹替えの声で)…一応,実況が福井アナであることは重要なのか。これはひょっとするとフジテレビ側からの要求?

ゲストの声が吹替えってのもかなり違和感がある。今日のゲストは小林幸子だったんだが,声知ってるからなぁ。英語ペラペラしゃべられるとちょっと…

試食のところも,鹿賀丈史がゲストに話しかけるところは日本語で,それにゲストが英語で答えてるもんでかなりシュールだ。吹替えの声にかぶって,他の審査員どうしがしゃべっている声をマイクが拾ったりするところは,さすがに吹き替えられず日本語がそのまま拾われていたが,律儀に英語字幕が入っているという作りこみよう。

ちなみに,今日の食材は「たらこ」で,九州は武雄温泉にある「扇屋」(字,合ってるかな? )の主人が和の鉄人・森本に挑んだ回だった。結果は同点引き分けにより,30分の延長再試合。延長戦のお題は来週のお楽しみ。

2010年8月13日金曜日

珈琲のご利益

こないだ,ツアーガイドの John さんから大学近くのカフェを教えてもらった。そのうちの一つ,Seven Seeds というカフェが,実は僕のオフィスのある ICT ビルの目と鼻の先にある。今日,ある論文を読んでてちょっと煮詰まったんで,そこに逃亡。


外観はいたってシンプル。知らないと通り過ぎそうだ。

ところが,中に入るといきなり壁にチャリンコが…


平日の午後だが,店の中は学生や近所のビジネスマンなんかでいっぱい。外は肌寒いが,中は暖かくてコーヒーの香りが心地よい。ただ混んでいるせいもあるけど,少し雑音レベルは高め。

とりあえず,「本日のコーヒー」なるものがあったんで,それでロングブラック(多めのエスプレッソ)を注文。


んんん!いいじゃないの,これ。聞いてみたら,タンザニアベースのブレンドだって言うんだけど,結構酸味が聞いてて,ちょい浅煎りっぽい風味もある。「本日」だけにしとくのはもったいないな。ジョンさん絶賛だったけど,ここはいいぞ。こんな近いんだから,ごひいきにしようかと思う。

しかも,コーヒー飲みながら論文眺めていたら,煮詰まっていた問題も解決。すっきりした。コーヒーのせいもあるけど,このくらいザワザワ感(S/N比?)が心地いいせいもあるかも。

うまいコーヒーと心地よいカフェさまさまでした。

2010年8月12日木曜日

ほっ時計

あいたたた orz

月曜日,時計が壊れた。朝起きた頃までは快調に動いていたんだが,突然止まった。悲しいかな,最後の時刻を刻んだまま止まっております…


どうやっても動かん。ソーラー電池なんで,電池切れってことはあり得ないし,これまで 10数年使ってきたけど,この現象は初めて。修理に出してもいいが,内部が汚れて駆動系がうまく回ってないくらいなら,内部清掃で済むけど,ソーラーモジュール本体とか 2 次電池の交換とかになるとちょっと高そうだ。こっちは物価が高いし,しかも駆動系はシチズン製だったはずだから,日本に帰ってから見てもらった方が安く上がりそうな気はする。

こっちの学生に,時計屋の情報をいろいろ聞いてみたけど,一度修理に出そうと思ったら,高かったんで買い換えたとかいう話も聞いたんで,やっぱりちょっと躊躇して,ほったらかしにしてあります。

別のを買うとしても,いつダメになってもいいゴミみたいな激安時計を買うか,あるいは,走ったりするときにも使えそうな,それなりのものを買うか,この週末にでも値踏みしに行くか…いろいろ想定外の出費ってあるもんだな。

ちなみに,こっちで使えるかも,と思って持ってきた SIM フリーのノキア製携帯(何で持ってるかは別として)も,いくら充電しても電源が入らない…電池の問題だけではないと思うが,いろいろ泣かされております。

とか言ってるうちに,Bluetooth マウスも反応しなくなった。こちらは電池交換したら OK でした。呪われてるかと思ったよ。

2010年8月11日水曜日

Happy Birthday

今日は上のムスメの誕生日でした。夕方 Skype で話した(下の小坊主は爆睡してた…)。

僕の家族は,今,夏休みで東京を離れ,札幌の実家に帰省している。札幌には義姉一家も帰っていて,大人数で盛り上がっているようすでした。

当たり前のことだが,彼女は毎年,夏休みに誕生日を迎えるわけよね。僕の場合はゴールデンウィークだけど(ときどき出勤日だったりすることもあるけど…)。

子供たちはいつまで,札幌に行きたいっていうかな? 札幌には行きたいけど,親と一緒は嫌だって言うかもな。夏,少しでも涼しいところに行き先があるってのは,恵まれてるかもね。

でも,誕生日は友達と一緒がいー,なんつって別行動を取るようになるのかなぁ,やっぱし。

2010年8月10日火曜日

8 月のクリスマス

って映画ありましたね。長崎俊一監督,山崎まさよし主演の。オリジナルは韓国のホ・ジノ監督の「八月のクリスマス」ですけどね(字が微妙に違うとこにご注目)。そういえば,長崎俊一監督ともホ・ジノ監督とも食事したことあるなぁ,映画祭のボランティアしてたときに…懐かしい。

で,映画とは全然関係ないんだが,今日,University College はクリスマス・ディナーだった。毎週,月曜と火曜は High Table Dinner という 3 コースディナーが供されるわけだが,今日は少しカジュアルでクリスマスを楽しみましょうという企画。

南半球だからってぇ~,クリスマスは 12 月でしょぉ~??

と思ったあなた,そこのあなた。あなた,正しい。その通り。

ところが,12 月 25 日は,南半球は真夏。よくありますねぇ。ゴールドコーストあたりでサンタクロースがサーフィンしてたりする絵柄。そうそう,オーストラリアでもクリスマスは 12 月ですよ。ただ,やっぱ,真夏なもんで,厳かにディナーっていうよりは外でバーベキューとかになっちゃうみたいで,ちょっと趣がないってことと,学生寮としては,クリスマスはみんな帰省して誰もいなかったりするんで,どうせだったら,みんながいて,何か雰囲気それっぽい時にやってみようぜ,的な軽いノリで企画されたらしい。ここの大学院生に聞いても「8 月のクリスマスなんて聞いたことない」って言ってたんでオージーにとっても初体験だったようです。

まぁ,今の時期にやるにしても,ちょうど半年ずれた 6 月 25 日でも,7 月でもなく,なぜ 8 月の今かってことについては,特に理由はないらしい。スケジュール調整の結果,なんとなく,くらいの話だろう。

雰囲気だけでも写真くらい撮ってくれば良かったんだが,カメラ持ってくの忘れた。すいません。

2010年8月9日月曜日

季節感

日本では高校野球なんですなぁ。高校野球っていうと,蝉の声がセットになってくれないと雰囲気が出ない。こっちでニュース読んでても全く実感が湧きまへん。

ちなみに僕のアパートがある University College は今週,クリスマスウィークだそうです。何だそりゃ?? その謎は~明日のお楽しみ。

2010年8月8日日曜日

MIFF #16 (Final)

"Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives"
@Forum Theatre

今回のメルボルン国際映画祭,僕自身のトリとなる作品がこれだ。サプライズ・スクリーニングということで,何が上映されるかわからないうちにチケットを買っておいたのだが,フタを空けるとカンヌのパルム・ドール受賞作という幸運!直前に観た「キャタピラー」の余韻が醒めないうちにスクリーンに向かった。

しかし,不思議な作品だった。

主人公のブンミおじさんは腎臓病をわずらって死の淵にいる。そんな彼のところへ,死んだ奥さんの幽霊やら,行き別れた息子だという猿人やらが訪ねてくる。そして,我々観客はブンミおじさんというチャンネルを通して,過去や未来へと縦横無尽に連れて行かれる。一見,水木しげるの脳みその中を覗いているみたいだ。ブンミおじさんが死に際して見た夢なのか? あるいは彼の魂とともに前世や,これから訪れるであろう未来の世界を旅しているのか?? この映画は,唐突なまでに時間と空間を行き来する。その意味では,水木しげるというよりも,ゴダールの映画を見ているかのようだ。

今年,カンヌの審査委員長はティム・バートンだったわけだが,彼の「見たこともないファンタジーの要素があり,美しく奇妙な夢を見ているようだった」という言葉は,まさに的確だとしか言いようがないし,彼をして,本作にパルム・ドールを与えせしめたことは理解に難くない。

ゴダールの作品と同様,今回の映画祭で,これまでにしたことのないような映像体験ができたという意味では,この作品を見られた幸運に感謝したいし,このような映画がアジアから出てきたことも嬉しく思う。しかし,個人的には,ちょっと説教臭く感じられるところもあり,その部分がファンタジーとしての世界観にそぐわないような気がして納得がいかない部分もあった。タイは歴史上いろいろなことを経験してきた国でもあるし,現在の政情も不安定だ。監督がインディペンデント映画としてこの作品を撮るにあたっても,さまざまな障害があったことも予測できる。ただ,そういった背景が作品に反映され,せっかくの夢から醒めてしまうような瞬間があったことは残念と言わざるを得ない。同じメッセージを埋め込むにしても,もっと別の方法があったのではないか?

…ぜいたく言い過ぎだろうか。

Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives
(2010 年 / フランス=ドイツ=スペイン=タイ / 114 分)
監督:Apichatpong Weerasethakul
出演:Thanapat Saisaymar / Jenjira Pongpas / Sakda Kaewbuadee
第 63 回カンヌ国際映画祭パルム・ドール

★★★★★★★☆☆☆

MIFF #15

"Caterpillar" @Forum Theatre

濃く,複雑な映画だ。観終わった後の素直な感想である。

去年の夏,若松孝二監督の講演を聞いて以来,見なくちゃいかんと思っていた作品。

戦争で四肢を失った夫が帰ってきた。軍神と崇められる男を,「国家のため」と世話をする妻。食うことと寝ること,性欲を満たすことしかできない「神」に尽くす女の姿を通して戦争の愚かさと無残さを問う…。表向きはそう説明するのがふさわしい作品だし,若松監督自身の第一義的な創作意欲もそこにあったろうと想像できる。

しかし,底流に流れる本質的なテーマは,もっと普遍的なもののような気がする。外見とは無関係に,社会の中で人間として生きることの意味を激しく問うているような気もするのだ。社会の中に置かれている以上,我々には外の顔があり,それでいて,自分ないしは本当に親しい身内にしか見せられない内の顔がある。我々の多くがそうした二義的な存在として日常を生きているわけだが,そのことの意味を問い,一個の「人間」として生きることの意義を深く追求しているようにも感じられてならない。

それにしても,夫と妻,この場合,「神」と「人」と言い換えてもいいのだが,この立場が少しずつ変化しながら推移するさまの何とサスペンスフルなことか。支配,服従,叛乱,欲望…人間が歴史の中で繰り返したことの縮図が,この二人の生活を通して描かれているかのようだ。中でも,精神の針が振り切れたときに見せる寺島しのぶの笑いは,しばらく脳裏から離れないかもしれない…。上映時間は 90 分に満たないが,そこで目にすること,感じることの濃密さは言葉では表しきれない。

ラスト,玉音放送が流れ(テロップは平易で現代的な日本語で書かれている!),戦争が終わる。それとともに「芋虫」も「神」から「人」になり果てる。一見,ひとつの時代が終わり,何かが変わったようにも感じられる。しかし,どうだ。「戦後」はまだ終わっていないし,我々の「人間」としての生活は,今も,これからも続いていく。

ちょうど一週間後の来週の日曜,敗戦から 65 年目の日がやって来る。

そして,我々はこれからも人間として生きていかなくてはならない。

Caterpillar (原題:キャタピラー)
(2010 年 / 日本 / 85 分)
監督:若松孝二
出演:寺島しのぶ / 大西信満
2010 年ベルリン国際映画祭銀熊賞最優秀女優賞

★★★★★★★★★☆

2010年8月7日土曜日

アート・フェア~

今日は,王立博覧会ビルで開かれている Melbourne Art Fair 2010 に行ってきた。この建物は世界遺産(できれば,懐かしの緒方直人の声で)なんですよ。


元来,そんなにアートな人ではないんだが,せっかくだからね。市内にはアートギャラリーがたくさんあるけど,どこのギャラリーに行ったらどんな作品を置いてあるかとか,よくわからないので,トーシローさんとしては,この手の見本市はいい機会だと思う。

メルボルンを中心に 80 以上のギャラリーが出展していたけど,「オッ」てものから,アブストラクトすぎて「?」なものまでいろいろでした。個人的には,アボリジナル風のコンテンポラリー・アートが結構あって楽しかったね。アボリジナル・アートの技法を用いて,モダンな作品を描いていたり,逆に西洋の技法を用いてアボリジナル・アートで描かれるような対象を表現していたり,そういうのが面白かった。

ギャラリーのカタログ的なものをタダで結構もらえたので,後でゆっくり見ようと思う。

一歩

ヒロシマの平和記念式典にルース駐日大使が出席したそうですね。少なくとも一歩前進だ。

65 年も前のことなのに,未だに片付いていないことが数多くある。

日本にも,やらなければならないことがあるよね。

2010年8月6日金曜日

MIFF #14

"A Somewhat Gentle Man" @Kino Cinemas

好きだ…

告白しちゃった…いや,でも,ホントに好きだ,これ。

"A Somewhat Gentle Man" とは主人公ウルリックのことだ。12 年ぶりに刑務所から出てきた彼は,自動車工としてまっとうに生きようと思うが,かつての仲間に復讐をそそのかされる…

プロットは,コーエン兄弟の作品を彷彿とさせるが,画面のタッチは彼らほどアーティスティックじゃない。ただ,北欧の寒い雰囲気がカウリスマキの作品を思わせるし,スウィートスポットをわざと少し外したような,オフビートな笑いもカウリスマキや初期のジム・ジャームッシュを思わせる。そりゃ,僕が好きなはずだ。

客観的に見ると可笑しいけど,でも,冷静に考えると,僕らみんなこんな感じよね,っていう,そういう笑いがエラいおかしい。彼に部屋を貸してくれるおばちゃんも最高。彼女も含めて,なんでこのおっさんがそんなにいいんだか知らないが,異様にモテまくる。でも,物語が進むにつれて,見ている僕らもこのおっさんが何だか愛おしくなってくる。

ラスト,彼が事を成し遂げると,街に春が訪れる。このときの彼の笑顔がまた素晴らしい。

ラテンジャズを思わせる音楽も,ミスマッチのようでいて,すごくいい。

いや,たまらん。

A Somewhat Gentle Man
(2010 年 / ノルウェー / 107 分)
監督:Hans Petter Moland
出演:Stellan Skarsgård / Bjørn Floberg / Jorunn Kjellsby
第60回ベルリン国際映画祭 "Berliner Morgenpost" 紙読者賞

★★★★★★★★★☆

MIFF #13

"Enter the Void" @Forum Theatre

アホか,こいつ。高校の時の担任のジ~さんは,「バカ」より「アホ」の方が愛情がこもってるって言って,「アホ」を多用してたなぁ。まぁ,ここでもそういうアホってことで。

ということで,アホ,もとい,変態,もとい,奇才ギャスパー・ノエの新作です。日本では 5 月頃に公開になってたようですな。実は,この作品,当初は全く観る予定に入ってなかったんだが,キネ旬誌上で塩田時敏さんがギャスパー・ノエにインタビューした記事を読んで俄然観たくなってしまった。別に塩田氏と同郷であることは関係ない。

幼い時に事故で両親を失ったオスカーとリンダの兄妹。東京で再会した二人だが,今は兄貴はドラッグディーラー,妹はストリッパーに身を落としている。映画の序盤でオスカーは警官に撃たれて死に,それから後の 2 時間余りは,幽体離脱した彼の魂が東京の街をさまよいながら,リンダを追いかけていく。

なんちゅう話だよ。2 時間もこのオバケの目線で俯瞰から東京の街を見下ろす。雑居ビルの壁を抜け,穴から穴へ,光から光へ。時には時間を超えて過去へトリップする。そんなん面白いのかよ,って思うでしょ? ねぇ?? でも,このオバケの疑似体験が結構面白い。おおよそ想像はできるけど,観たことない映像のオンパレードで,2 時間画面に釘づけだったよ。それに,オバケが飛びまわっているだけで,オチはどうつけるんだろうと予想しながら観る楽しみもあった。実は,結末は予想したいくつかのオチのうちの一つだったんだが,そこに至るまでに,何度か裏切られる楽しさもある。ただの変態じゃないことを見せてくれた。

しかし,これ,人によって評価は別れるだろうねぇ。こんなのを面白いと思えるなんて,俺も変態かねぇ?

あー,変態を 3 回も使っちったよ。あ,これで 4 回目だ。

★は 7 つのつもりだったが,オープニングタイトルがカッコ良かったんで 1 個サービス。オープニングで拍手が起こったよ。

ところで,これ,日本ではボカシ入りまくりだったんですかね…??

Enter the Void (邦題:エンター・ザ・ボイド)
(2009 年 / フランス=ドイツ=イタリア / 154 分)
監督:Gaspar Noé
出演:Nathaniel Brown / Paz de la Huerta / 丹野雅仁
第42回シッチェス国際ファンタスティック映画祭撮影賞 / 審査員特別賞

★★★★★★★★☆☆

硬派

昼を食べた後,何気なく新聞を眺めていたら,Concrete Blonde のライヴが 10/22 にあるって広告を発見。うーーー,この日はベルギーに行っててビール飲んでる予定だからメルボルンにはいない。

コンクリート・ブロンドっていうのは,ジョーネット・ナポリターノ(濃い名前だ)というヴォーカル兼ベーシストの女性が率いる LA のバンド。僕が初めて聞いたのは,修士の学生の頃(多分 1992 年),NHK-FM でやってた渋谷陽一のミュージック・スクエアで聞いたのが最初。次の日には CD "Walking in London" を買いに行った。"Ghost of a Texas Ladies Man" とか,JB をカバーした "It's a Man's Man's Man's World" なんて,今でも僕の iPod に入っている。ダークでゴシックな世界観が魅力だったね。まぁ,メインストリームになるような音楽性じゃないけどね。

いやぁ,残念だ。観たかったなぁ。未だに活動してたのが信じられないけどね。公式サイトも発見。どうやら活動休止の後,再開したっぽいな。

そういえば,当時,研究室の先輩オーヤマさんに
「えらい硬そうな名前やな~」
とか言われたことを今思い出した。…確かにね。

再考と試行

前に学生から twitter 始めてくれと相談された話を書いた。その時は,やる気がしないと言ってたんだが,ちょっと考え直して,いろいろな事情からしばらく試してみることにした。ただ,重心はこのブログに置きたい(これも諸般の事情による)ので,どのくらいツイートするかは微妙。それと,アカウント名を前のものから変えたので,数少ないフォロワーの皆さんはご注意あれ。kojtjok をフォローのこと。ここのサイドバーにも表示してます。

2010年8月5日木曜日

15年ぶり~その2

今日,Don と電話で話した。Don というのは前にも書いたけど,学生時代に国際会議で知りあって以来の知り合いで,キャンベラに住んでいる元大学の先生。9 月の半ばにシドニーとキャンベラを旅するつもりで,ここ数日その予定をすり合わせていた。メールだとまどろっこしくなって,直接電話をかけてきたらしい。

今回は,9/19 にシドニーで開かれるシドニーマラソンにエントリーしようと思っていて,その前後に彼の家を訪問しようと考えていた。シドニーは前にも行ったことがあるので,今回の滞在中に別に行かなくてもいいかとも思っていたんだけど,どうせなら,なんかイベントにかこつけよういうわけ。フルマラソンだけではなく,ハーバーブリッジを渡ってオペラハウス前でゴールという 9km のコースがあるってことで,走るというよりは眺めを楽しむことに重点をおいて,ジョギング気分で参加するつもり。だから,こないだの Run Melbourne みたいに目標タイムを設定するつもりはあんまりない。

できれば走った後でキャンベラの彼の家を訪問しようと思っていたけれど,ちょうどその頃彼の 2 番目の娘さんが帰省してきているってことで,スケジュールをどうしようかと話し合っていた。でも,彼女も僕に会いたいというし(15年前にも会ってる),僕がシドニーで 3 日ほど過ごしてから行けば,4~5 日は家族だけの時間も取れるってことなので,シドニーマラソンが終わった後の水曜日にキャンベラを訪問することで決着。彼の家に 3 泊してメルボルンに帰ってくることにしました。

キャンベラは観光客にとって決して魅力的な街ではないんだが,彼の家は都心から離れたところで,農場を持っているってことで,リラックスしたカントリーライフを満喫したいと思います。

シドニーでは自由に動ける時間が何日かあるので,ワイナリーとかブルワリーを巡るのもいいかもねぇ(またそこか)。

2010年8月4日水曜日

MIFF #12

"A Film Unfinished" @Greater Union 3

作家が何らかの意図を持って作り上げたものである限り,ドキュメンタリー映画には,作者の主観が半必然的に入り込む。

ナチのアーカイブから,ワルシャワのゲットーの様子をナチスの広報部隊が撮影したフィルムが発見された。タイトルには,一言「ゲットー」とだけ書かれてあり,フィルムは撮影されたまま,加工や編集を施されることなく,保管されていた。この映画は,生存者や当時のカメラマンなどの証言を交えながら,このフィルムに記録された映像を,そこに残されていたありのままを映し出していく。

ナチスは,このフィルムをどう利用しようとしたのか? そこには,ゲットーでのユダヤ人の生活が裕福なものであるように見せかけるよう,演出され,何度もテイクが繰り返されていく様子が映し出される一方,飢餓で亡くなった人々の死体を処理する様子まで記録されていた。プロパガンダと記録の双方の意図があったと予測される。

ナチスがこの映画を完成させていたならば,プロパガンダとして機能したであろう。一方,本作では,ナチの狂気と愚かさが,極めて静かなタッチで浮き彫りにされていく。この未編集のフィルムをそのまま映し出すことにより,作者の意図が逆に明白になっているのだ。その意味で "A Film Unfinished" というタイトルは秀逸だ。

それにしても,生のフィルムをそのまま利用したことに対し,作者には大きな敬意を払わねばなるまい。失われかけたフィルムに解釈を与えた上で,現代の技術により,メディアとして残したことも確かに重要である。一方,このフィルムには,当時のユダヤ人の生活がそのまま記録されている。彼らの顔も,身体も,そして亡骸に至るまでが,ありのままの形で,ときにはクローズアップを用いて記録されている。その意味では,これを白日のもとにさらすにあたり,作者には大きな勇気と責任が要求されることになる。何よりもその意味で作者を讃えたいと思う。

人間の尊厳を貶めたことを糾弾し,暗黒の歴史を繰り返さぬことを叫ぶだけではなく,死者を尊ぶためのレクイエムとして,これほど静かでありながら過激な方法はないのではないだろうか。

あの大戦が終わって,もうすぐ 65 年になる。しかし,歴史はフィルムのリールのように今も回り続けている。

A Film Unfinished
(2010 年 / イスラエル / 89 分 / ドキュメンタリー / 白黒, 一部カラー)
監督:Yael Hersonski
出演:Alexander Beyer / Rüdiger Vogler
サンダンス映画祭2010 ワールドシネマ ドキュメンタリー部門編集賞

★★★★★★★★★☆

2010年8月3日火曜日

MIFF #11

"Poetry" @Greater Union 4

この女性は,そもそも詩人だったのだ。

イ・チャンドン監督の新作,『詩』のストーリーは,ある女子生徒の自殺と,その生徒と同じ学校に通う孫を持つ女性が詩作を習うさまが,危うく絡み合いながら進行していく。音楽をまったく伴っていないこともあり,その緊張感は物語の進行とともに,静かに,かつ少しずつ増幅されていく。

彼女は詩を習い始めるが,なかなか形にできない。加えて,物の名前を忘れるようになったことがアルツハイマー病の初期段階であると診断される。詩が,風景や人間の想いを表現する媒体として「言葉」に依存している以上,これは一見致命的に見える。しかし,どうだろう? 彼女は,憐れみ,悲しみといった感情のみならず,美しい花や日常の風景を愛でる心を確かに持っている。それを形式としての「言葉」に変換できずにいるだけなのだ。もし,我々が言葉を失くし,互いの心を見通すようなノンバーバルなコミュニケーションを身につけていたならば,彼女は生まれながらにして,偉大な詩人と称されていたかもしれない。(そんな世界で「詩」という形式が意味をなすかどうかはわからないが…)

アンパンマンでおなじみ,やなせたかしさんは著書『誰でも詩人になれる本』の中で「大切なのは詩の勉強ではなく激情だ。」と説いているということだが,確かにそう思う。僕だって,心の底から感動したり,嬉しかったり,怒ったりした時には,自然に手が動き,筆が進むような経験をしたことがある。激情は,人の想いを「言葉」に変換するための触媒として確かに機能するのだ。

事実,彼女はラストで素晴らしい「詩」を書き上げる。二つのストーリーラインが絡み合い,増幅し続けた緊張感が極限に達したとき,彼女の心の叫びは,激流のように「言葉」となって解き放たれる。彼女が言葉を失い始めているにも関わらず…

カンヌで脚本賞を獲ったということはダテではない。心と詩の問題だけでなく,言葉が元で生じるコミュニケーション・ギャップや憶測,誤解といったことなども時折絡められたプロットは,ある意味計算しつくされているようにも映る。しかし,イ・チャンドン監督がこの物語をいかに巧妙に紡ごうにも,主演のユン・ジョンヒの演技がなければ,これほどまでに観る者の心に訴える作品にはならなかっただろう。

主人公の聡明さ,心の動き,そして言葉を実際に体現したのは彼女に他ならないのだから。

Poetry (原題: 시 / 詩)
(2010 年 / 韓国 / 139 分)
監督・脚本:Lee Changdong (이창동 / 李滄東)
主演: Yun Jeonghui (윤정희 / 尹静姫)
2010 年カンヌ国際映画祭最優秀脚本賞

★★★★★★★☆☆☆

美しすぎるスパイ

今月の終わりに,Udaya さんの暗号の授業で,1回だけステガノグラフィに関する話をゲストとして話すことになった。その準備を昨日から始めたんだけど,話のツカミを何にするかを考えてた(もっと本質的なことから始めろよ,という気がしないでもないけど)。ロウ版の下に文字を書いたりとか,文字を書いた糸を服に編みこんだりとかいうスタンダードなものから,剃髪に刺青を彫って髪を伸ばしたり,という脱力なものまで,歴史の中にはいろんなサンプルがあるわけですが,どうもどれもしっくり来ない。

で,何気なくウェブを検索してたら,タイムリーなものがあったよ。ロシアのスパイ。そういえば,そんなこと言ってたよなぁ,確かに。FBI の捜索でステガノグラフィの解読用プログラムが入ったディスクが見つかったとかさ。これがいい,これがいい。

というわけで,僕の講義のツカミは Anna Chapman でバッチリ。最後のオチもここに戻そうかな?

…今日はマジメに本体の内容を考えるか。

2010年8月2日月曜日

「シュ」ではない。「ヌシ」と読む。

こちらに来て,100 日が過ぎました。早いもんだね。今月末には 1/3 が終わることになる。今日,キャンパスを歩いていたら,同じ University College に住む学生に声をかけられた。これだけ長くいれば,面も割れるよな。

ビジターの中には 1 週間程度しか滞在しない人や,定住するためのアパートを見つけるまでの短期滞在の人,それから僕のように 数か月単位で滞在する人など,さまざまな人がいます。でも,学生を除けば,まるまる 1 年ってのはさすがに珍しいみたいですね。僕が来てからたくさんのビジターが来ては去って行きました。最初は戸惑うことが多かったけど,新しい人にアドバイスできることも多くなってきましたよ。慣れですね。

先週末,日本人の研究者一家が日本へ帰ったら,別な一家が入れ替わりで大阪からいらっしゃいました。子供がウチの子と同じくらいなので,何だかほほえましく見ています。

2010年8月1日日曜日

ワイン漬け

今日は,Yarra Valley にワイナリーツアーに行ってきました。Cold Stream Hill,Dominique Portet,Domain Chandon,Yering Station という 4 ヶ所のワイナリーを順に巡り,テイスティングをしました。最初の 2 つは小さなワイナリーでしたが,記憶に残るワインが多かったような気がします。個人的には 2 番目の Dominique Portet で飲んだ 2009 年の Pino Noir が,決してへヴィではないんだけど,スモーキーな香りにに特徴があって気に入り,1 本購入。今は若い感じだけど,時間が経つともう少し落ち着いた感じになるんじゃないかと思っています。最初の Cold Stream Hill も全体的にレベルが高かったと思います。今度,酒屋で探してみよう。


下の写真はあるワイナリーにあったオブジェ。どこの国でも,水があれば人は金を放るんですな…


うん…まだ夜の 7 時半だが,もうかなり眠いぞ…