2010年7月26日月曜日

MIFF #04

"Garbo : The Spy" @Forum Theatre

ドキュメンタリー映画には,昨日の "The Red Chapel" のように,「あぁ,そうそう,なるほどね」と思わせるものと,「ウッソだろぉ~」と思わせるものがある。この作品は,間違いなく後者。まぁ,どっちもホントなんだけどさ。

スペインのカタルーニャ生まれで,第 2 次大戦中にイギリスとナチスの 2 重スパイだった男に関するドキュメンタリー。「ガルボ」というのは連合国側,すなわちイギリス軍側が彼に与えたコードネーム。グレタ・ガルボは『マタ・ハリ』で女スパイを演じているし,彼自身もどれが本人だかわからないくらい,虚構で固められた人生を歩んでいて,考えれば考えるほど,このネーミングは絶妙。ガルボのスパイとしての実績で最大のものは,ノルマンディー上陸に関するもので,彼はナチス側に誤った情報を与え,これが連合国軍の作戦成功につながるというわけ。

その実績が歴史の重大な局面に関与しているにもかかわらず,彼自身の存在は歴史の陰に隠されたまま,あまり知られていない。この映画でも,次から次へと「ウッソだろぉ」的真実が明らかになっていく。まさに事実は小説より奇なり。戦後,彼はアンゴラで死んだことになっていたんだが,実はそれも嘘で…という展開には,もう口があんぐりと開いたまま塞がらない。

しかし,この映画の凄いところは,この驚くべき題材だけではない。映画の構成がまたイカしている。専門家や元スパイへのインタビュー映像,ニュースフィルムなんかを使うところは,よくあるドキュメンタリーと変わらないけれど,数ある戦争映画やスパイ映画,アニメなどからのフッテージを含めた夥しい数の映像素材をパッチワークのように組み合わせて,この複雑で謎に満ちた男の足跡をあぶり出していく。もちろん,ガルボの『マタ・ハリ』も登場。捻りのきいたユーモアも利かせながら,一流のミステリーのような味わいも感じられて,これは秀逸。

作品自体には関係ないけれど,上映時にフィルムの切り替えがうまく行かず,映像が乱れたのはちょっと残念だった。 今どき珍しいミスだと思うが…

Garbo : The Spy
(2009 年 / スペイン / 88 分 / ドキュメンタリー / 一部白黒)
監督:Edmon Roch
出演:Nigel West / Mark Seaman / Xavier Vinader / Aline Griffith
第 24 回ゴヤ賞最優秀ドキュメンタリー映画賞

★★★★★★★☆☆☆

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